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見直すべき悪きし人事制度とは。日本文化に適した人事制度設計の進め方。

この記事では、日本企業が採用すべき人事制度の理念とその理由、とりわけ日本の風土・文化について記載しています。主に、以下の方を対象としています。

  • 自分の会社の人事制度に疑問をお持ちの方
  • 給料の上がり方に不満を持つ方
  • 日本企業が採用すべき人事制度の理念を知りたい方
  • サラリーマンとして基礎教養をつけたい方

日本企業の給与に対する考え方は、一般的に、年功主義であっても能力主義であっても、実質、給与支払い基準に対する運用面に大きな差は見られません。職務が人事の基準になっていないがゆえに、人事制度の機能不全が顕在化しているのが、現在の日本企業の状況です。では、どうすればよいのか。その回答について考えてみます。答えは、職務主義と人間の調和をめざした職務・職能主義を会社に根付かせることです。

日本企業における人事制度疲労

あるべき人事制度を考える前に、まずは、日本企業の人事システム基幹部分を知っておきましょう。

日本企業の人事システム基幹部分は次の5つから構成されます。

  • ①定期採用制度(新卒採用制度)
  • ②定年制度
  • ③継続的人材育成制度
  • ④内部昇進制度
  • ⑤定期昇給制度

これら日本型人事システムのベースにあるのは「人間中心主義」・「人間基準」の考え方です。

「人間中心主義」・「人間基準」は、日本に風土として、文化として根付いているもので、これを無視して人事制度を考えることなどできないことは知っておきましょう。

職務(欧米)と資格(日本)による人事序列

日本企業の給与に対する考え方が、年功主義であっても能力主義であっても、実質、給与支払い基準に対する運用面に大きな差は見られません。

これは、日本が風土・文化として持つ「人間中心主義」・「人間基準」の中で「属人的条件」が重視されることに由来します。

欧米における人事序列は職務の序列ですが、日本においては職務とは関係のない「資格」により決められます。勤続年数などで序列が決まる年功的資格制度に代わって、多くの大企業や中堅企業では「職能資格制度」が取り入れられています。

この制度は、職能遂行「能力」の序列であって、現在の職務で期待される能力を「発揮」しているかどうかを問うものではありません。したがって、能力を発揮しなくても、能力があると会社に思わせれば、従業員は給料が上がる仕組みなのです。

職務が人事の基準になっていないがゆえに、人事制度の機能不全が顕在化しているのが、現在の日本企業の状況です。

日本が求めるべき人事制度

日本が風土・文化として「人間中心主義」・「人間基準」が根付いている限り、日本が求める人事制度の理念は以下のようになります。

それは、基本理念を『個と組織を生かす』とし、人事理念を『職務主義と人間の調和をめざした職務・職能主義人事』とすることです。

目指す姿は『個の成長と会社の成長』であり具体的には以下の通りです。

・個人の成長と会社の成長とが同時に実現している。

・個人の利益と会社の利益がハイレベルで両立している。

・ほとんどの社員が仕事および会社に満足を有し、会社の業績/生産性の向上に寄与している。

会社は、会社が成長して個人が成長しないのは望んでいません。高度成長期は、会社が成長して個人が成長しないでも給与は上昇しましたが、現在のような経済低迷期に、この個人が成長しなくても給料があがるという考え方に偏るのは会社を疲弊させるだけです。

人事考課者の基本姿勢と目標管理制度

日本企業が、基本理念を『個と組織を生かす』とし、人事理念を『職務主義と人間の調和をめざした職務・職能主義人事』とするように人事制度を考えることが重要であることはわかったかと思います。

では、具体的な人事考課を考えてみましょう。

人事考課とは『仕事に関連する要素の評価』です。

人事考課は、管理職自らがつけた業務観察記録を基に次の3要素で行います。

  • 職務能力(発揮能力と潜在能力があるが評価対象は発揮能力)
  • 情意(業務プロセス)
  • 成果(業務目標の達成度)

また、人事考課と目標管理制度による評価は全く別物です。

目標管理制度は『高難度の目標に対して個人の能力をいかに開発し達成するか』に焦点を当てています。

個人の能力開発に焦点を当てている制度であるため、目標達成を賃金に影響させると達成可能目標しか立案しなくなります。

目標管理制度は、人材育成、動機づけのために活用して賃金とは切り離すべきであり、人事考課や査定の手段として目標管理制度を用いてはならないのです。

人事考課、査定、目標管理制度はそれぞれ全く異なる考え方です。人事考課の結果を基に査定で賃金に反映させ、目標管理制度による評価は賃金に反映させるべきものではないのです。

目標達成を賃金と連動させると達成可能な目標しか立案しなくなるからです。目標管理制度は人材育成、動機づけのために活用する制度であること強く意識する必要があります。

目標管理制度を上手に活用し、業務遂行を達成できる能力を向上させ、職務主義と人間の調和をめざした職務・職能主義を会社に根付かせる必要があります。

まとめ

新卒採用、終身雇用を人事システムの基幹に据える日本企業はまだまだ多いです。

そのため、際立った能力を持たずに入社してくる新卒者を、終身という時間をかけて能力開発させていくことは、会社にとって重要な使命でなのです。

目指すは「個人の成長と会社の成長とが同時に実現」「個人の利益と会社の利益がハイレベルで両立」している状態です。日本企業にとって、管理職による組織の人づくりがいかに重要かということです。

目標管理制度を上手に活用し、業務遂行を達成できる能力を向上させ、職務主義と人間の調和をめざした職務・職能主義を会社に根付かせる対策をとりましょう。

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